2023年12月21日(木)に「第5回 北海道医療的ケア児等コーディネータ― フォローアップ研修」がオンラインで開催されました。
医療的ケア児等が抱える課題やサービスは、多岐にわたります。保健・医療・福祉・教育等の必要なサービスを総合的に調整し、医療的ケア児とその家族に対して、サービスを調整したり、関係機関とつなぐ役割等を担うのが、「医療的ケア児等コーディネーター」です。
その「医療的ケア児等コーディネーター」を養成するための研修は毎年開催されていて、北海道では一年に50名ほどの新しいコーディネーターが誕生しています。
▶ 厚生労働省:医療的ケア児等コーディネーター養成研修 実施の手引き(参考PDF資料)
全道各地に散らばるコーディネーターをつなぎ、学び合うフォローアップ研修が、北海道医療的ケア児等支援センター(医療法人稲生会)主催で、定期的に開催されています。
毎回テーマは様々で、今回(第5回)のテーマは「レスパイトについて考える」でした。
札幌市の障がい福祉課からは、行政の立場できることとして札幌市の取り組み(札幌市在宅レスパイト事業)をご紹介いただき、公益財団法人 北海道医療団音更病院(以下、音更病院)からは、医療的ケア児の短期入所に向けての取り組み(レスパイト入院)に関する事例報告がありました。
それらを受けて「レスパイト」をキーワードに、各地域での取り組みや、今後の取り組みについて活発な議論が交わされました。
レスパイト(respite)とは、英語で「休息」「息抜き」を意味する言葉です。医療用語では、在宅介護をする家族などの介護者を、介護から開放して休息させることを目的とした「レスパイトケア」や「レスパイト入院」などの言葉があります。
音更病院の事例報告に先立ち、松山(訪問看護ステーション かしわのもり)から、同院でレスパイト入院を受け入れてくださるまでの経緯をお話しました。
これまで十勝にはレスパイトを受け入れてくださる施設が1か所しかなく、コロナ禍には受け入れがストップし、実質的にレスパイト先がない状態が続いていました。
そんな折、音更病院の光恵子さんから「何かできることはないかな」と声をかけてくださいました。
終日人工呼吸器を使用する小児を看たことのない病院であっても、レスパイトサービスとして定着させるかもしれないというワクワクした気持ちになりました。
ここから光さんと二人で相談しながら、手探りの準備が始まりました。
今振り返ると、ゆっくり時間をかけたことで、院内研修で人工呼吸器の技術の獲得、北海道医療的ケア児等支援センターのセンター長 土畠智幸先生の研修会を開催して知識を深め、並行して病院スタッフの方が医療的ケア児の訪問看護に同行して、暮らしの様子を知っていただくことができました。
この過程で院内での検討を繰り返し、スタッフの方のこころの準備もできたように感じます。
光さんとは帯広厚生病院の看護部長をされていた時代に、いぇーる in とかち の取り組みに賛同してくださり、「五感 De 運動会」の第1回を厚生病院開催できたのも影で応援してくださったご縁があります。
そんな光さんのお話は…
医療療養型病院とは 慢性期の方や治療よりも長期にわたる介護が必要な高齢者を対象にして、医療ケアやリハビリテーション等の必要なサービスを提供する病床 ↓ ↓ ↓ 何か、出来ることは無いのだろうか 急性期にはできない慢性期の病院として、出来ることはあるはず ↓ ↓ ↓ 在宅での困りごとは、訪問看護に聞くのが一番!! |
「何か、出来ることは無いのだろうか」と、急性期病院で長く看護職を努めた方が地域に思いを馳せる。そこが光さんのセンスの良さだと常々思います。
これまでも「本当は在宅、訪問看護に興味があるの」と幾度となくつぶやかれていました。しかし、光さんにはまだ病院の中での役割がありました。
それが、医療的ケア児の生活を支えるサービスの一つを担うという形で結実したことは、感慨深いものがあります。
発表の時点で4〜5名のこども達が利用し、多くがリピーターとなっています。利用の仕方はそれぞれに違います。最初は慣れない子ども達も、回数を重ねることで、看護師さんと友達になっていく様子を聞くとほっとします。
これから徐々に利用者が増えることが見込まれます。
24時間365日休むことなく医療的ケアが必要な子ども達の育児は、想像を超える大変さがあると思います。でも、多くのご家族はかえってこちらが力をいただく程いきいきと生活されています。
そんなご家族が安心して預けることのできる場所があれば、頑張り過ぎているとき、不意な出来事でどうしても子どもさんを預けたい時に、共助ではない公助のサービスがあれば、暮らしづらさの解消につながると思います。
レスパイトの一つの手段として音更病院のレスパイト入院の形態が、今後十勝の他の施設や病院で緩やかに拡がっていくことを期待しています。
今回のテーマに関心を寄せる方も多く、当日の参加者は50名を超えて、フォローアップ研修の中では最多だったそうです。
レスパイトの取り組みはそれぞれの地域で違うと思います。十勝でも入院という形態にこだわらず、知恵を出し合って子ども達もご家族も安心して利用できる支援を考え続けたいと思います。
かしわのもり 松山