2019年11月2日、医療的ケア児とその家族を対象とした「五感 De 運動会」を“初”開催しました!
医療的ケアが必要な子ども達が主役になる運動会って、どんな運動会なんだろう???
そうです、当の本人たちは医療的ケア児。運動とは限りなく遠いところにいる…?!、のではないかと、実施者側の私たち「ちくだいKIP 」もそう思っていました。ですから、この運動会は本当にどうなるのかまったく予想のつかないイベントだったのです。
勿体ぶらず、先に結論から申しますと、控えめに言って・・・「最高」でした!
何が「最高」だったのか、以下に取り止めもなく述べたいと思います(笑)。
そもそもの始まりは、「いぇーる in とかち」メンバーの何気ないつぶやきがキッカケでした。
保育園・幼稚園・小学校・中学校で運動会に参加している子ども達もいます。
でも、並ぶ順番はいつも一番前か後ろ、両端かど真ん中で…
友達がよさこい踊れば、なんとなく先生が手をうごかしてくれて、
友達が徒競走で走る時は、誰かがバギーを押してもくれる。
玉入れ。先生が代わりに控えめに(あまり上手にいれるとお友達に悪いよね)玉を投げてくれたり、
学年が進むにつれて、友達の足を引っ張らない様に気を使ったりして…
そんな彼らをなんとかして「運動会」の主役にしたい!
ブレインストーミングの段階で、専門家の中に置かれたイノセントな私は「うつ伏せとかどうですか?」。
はい、みなさん苦笑いですね。いや、呼吸器つけてるからねぇ…。
しかしその後、ぐらんつ(特定非営利活動法人 共生シンフォニー 重症心身障がい児者通所施設 ぐらんつ )に通所するみなさんに会いに行って、ご家族やスタッフさんと話すうちに「ま、いっちょやってみっか」という気持ちになっていきました。
なにかできそうだなと、感じてきたということです。
最も心に残ったお話が、「(ぐらんつに)通所の方達の中には、自分の意思で動かせる身体のパーツを1箇所探すのに10年かかる方もいる」ということ。
これを聞いた時、愕然としました。そして、さらにもう10年経過すれば2箇所目が、というわけではなく…そこからは生命の淵も関係してくると。
ああ、もう私はどうすればいいのかわかりませんでした。心の置き所も、運動会の内容も、まったく。
でも・・・とにかく、なんでもいいからやってみるしかない!やらないで後悔するより、やってみて次に繋げよう!と、自分自身を奮い立たせるほかありませんでした…
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メイン実施者(ちくだいKIP )としては不安を残しつつも、「いぇーる in とかち」に関わる仲間の層の厚さとチームワークにより、当日までの準備はつつがなく行われました。
中でも開催場所として帯広厚生病院小児科病棟さまの協力を得られたことは、この上ない安心感を与えてくださいました。「何かあってもここ病院だ!」を合言葉に、私たちは全力でふざけ、盛り上げることを決心したのでした。
当日、まずは保護者の皆さんの空気づくりから。ここがキーポイントだったと思います。
医療的ケアは昼夜関係ありませんから、保護者の方達の中には、もうかれこれ数年ぐっすり眠っていないという方もいるとか…
そんな保護者の皆さんが少しでもリラックスできるようなストレッチング(ストレッチ体操)から運動会スタート!
最初は硬い表情で、おそるおそる動きも硬かったお父さんお母さんも、私(なぜか昭和の体操おじさん風スタイル)と一緒に体を動かしながら、(軽快な話術?につられて)みるみる場は和んでいきました。
そしていよいよ主役の子ども達が…と思いきや、さきほど体をほぐしたお父さんお母さんに、巨大エアトランポリンで大人も遊ぶ!をテーマにした運動でトランポリンの楽しさを体感してもらいました。
「ほっ ほっ ほぉっ ほぉー」と、謎の掛け声が響きわたり会場のテンションも上がっていきます。
完全に空気を掴めたと思います。お父さんお母さんが笑顔で楽しんだ姿を見て、みんなもリラックスできると、そう踏んでいたのです。いや、リラックスさせたいとかそういうことでもなく、とにかく「今!」いまが楽しい瞬間なんだということを会場全体で表現したかったのです。
いよいよ主役の子どもたちの登場です!おとながこれだけ盛り上がったのだから、子ども達も負けるわけにはいきません!
挑戦したミッション(競技種目)は3つ。
- 揺れる床を攻略せよ! 〜みんなが乗ったエアトランポリンを横で揺らす〜
- 巨大風船をタッチせよ! 〜直径1mの迫りくる風船にタッチ〜
- 姿勢を変えて重力を感じよう! 〜うつ伏せ体験〜
ピンクチームとグリーンチームに分け、ポイント獲得対抗戦!
ポイント算出方法は「五感で感じて、心が動いたら得点」というまったくもって新しいスタイル。
どうにもこればかりは私(審判)の主観ではありましたが、保護者のみなさんやスタッフさんから「今喜んでます!」「指!指! 動いた」「この顔は楽しんでる!」といった申告により、「緑さん1点!」「ピンクさんも1点-」と完璧なまでの採点(?)ができました。
さらに言えば「心が動いたら」ですから、怖がっているとか焦っているとった普段ならネガティブな感情も、一つの素晴らしい体験なんだと解釈して、プラスのポイントとしました。
総勢100名以上のみなさんが織りなす様々な感情の渦は、いつしか全体をやわらかく包んで最終的には一つの穏やかな達成感を生んでいました。。。
「いぇーる in とかち + ちくだいKIP」のみんなで模索したこの「五感 De 運動会」でしたが、常識を「ひっくり返して」返ってきたのはむしろ「感謝」でした。
みなさんからいただいた感謝と、私たちから医療的ケアが必要なみんな・ご家族・サポートするスタッフさんへの感謝。
私は福祉が生業ではないので、他の皆さんとは違い、考えることがまったく稚拙だと思いますが、この運動会で感じたことは「人間の生きているというパワー」でした。それだけで充分、ということ。この世の中で流れに乗って生活していると気づかないような、誰かが決めた人生の重み付けから解放されて、ただ「生きている」ことを感じる。私もみんなに負けられないな、私も生きているということをもっと燃やさなければならないな、そう感じさせてくれました。
「五感 De 運動会」、次回もどうぞご期待ください。
一般社団法人 ちくだいKIP
理事 村田 浩一郎
(始まりのつぶやきをした「いぇーる in とかち」のメンバーより)
「運動会」って聞いて、ワクワクする人が多いのでは。
もちろんインドア派の人には苦痛かもしれませんが、「運動会」「遠足」「発表会」はやっぱり特別な日で、前の日からドキドキした思い出として残っているのではないでしょうか。
医療的ケアが必要な子ども達や、重度の障害がある子ども達も、そんな特別な日に心の底からワクワクする感覚を楽しんで欲しいという願いから、「運動会をやりたい!」と思ったのです。
形式なんてどうでもイイ。大切なのは五感で感じて、刺激されて、表情や指が動いて、見えない心が動くこと。そんな思いに共感してくださった「ちくだいKIP」の皆さんが素晴らしすぎるプログラムを考えてくださいました。
そして、ドキドキ・ワクワクの当日は、ごっちゃごちゃで、めちゃくちゃで、皆で笑って何かを感じた90分はあっという間の出来事でした。
企画から準備、そして場を盛り上げてくださった、ぐらんつ(特定非営利活動法人 共生シンフォニー 重症心身障がい児者通所施設 ぐらんつ )の工藤さんはじめスタッフの皆さま、ボッチャの体験を行ってくださったポラリスとかち(NPO法人みんなのポラリスのボッチャチーム )の皆さま、そして個人でボランティア参加してくださった方々、本当にありがとございました。
また、どんなことになるかわからない第1回にも関わらず、快く場を提供くださったのは帯広厚生病院さん。感謝しかありません。
そんな皆さんの温かい思いが重なって、「五感 De 運動会」を開催することができ、「次はもっとワクワクする内容で!」と約束をして、熱気冷めやらぬまま終えることができました。。。
走りまわれなくたって、わけがわからかくたってイイじゃない。
やりたいことはただ一つ。
一緒にワクワクしたいだけなんだ。