日常的に医療的ケアを必要としている子どもたちは、福祉・保健・医療・保育・教育等、多岐にわたる領域の支援が必要になります。
以前はその各領域をつなぐ役割を保護者が一手に担っていましたが、現在は相談支援が進展しています。さらに各機関もお互いを知り機能的に連携することで、医療的ケアを必要としている子どもたちの生活がより良くなると考えられます。
そこで、今回「いぇーる in とかち」では、十勝で実際に行われている支援や活動について、各方面で活躍されている4名の方々からの報告を通じて、情報共有やネットワークづくりに資するための研修会を企画し、令和3年10月19日(火)に開催しました。
9月30日に、すべての都道府県において緊急事態宣言が解除されたとはいえ、まだまだ予断を許さない状況が続いています。
そのため、今回の研修会は、芽室町中央公民館講のリアル会場とZoomを活用した “ハイブリッド形式” で開催し、合計86名(会場参加者26名、Zoom参加者60名)の方がご参加くださいました。
地域で支援を行っている方の活動報告として、最初に登壇してくださったのは「貴戸 多香美」さんです。
貴戸さんは帯広市内に重症児デイサービス「プエオキッズ」を開設し、その代表理事をされています。医療的ケアを必要としている子どもたちは、安心して通える場所が限られてしまい、そのことから保護者の負担が大きくなる場合があります。貴戸さんはその居場所を自ら開設された当事者のお母さんです。
貴戸さんは、ご自身のお子さんが医療的ケアを必要とし大変苦労された経験から、様々な医療的ケアが必要であったり重度の障がいを持っていたりしても、家族と一緒におうちで暮らし、子どもらしく育って欲しいという思いから「プエオキッズ」を立ち上げたという経緯を紹介しました。
プエオキッズでは障がいの程度に関係なく、全ての利用児に対してひとりひとりの個性を大切に、子どもたちが楽しく、笑顔いっぱいに過ごせるよう熟練した専門スタッフがチームとなり対応しています。
これからも様々な課題を共に考えて、皆様と共に歩みたいと語りました。
2人目の講師は、「笹山 美香」さんです。
笹山さんは十勝障がい者総合相談支援センターで医療的ケア児たちが地域で暮らしやすくなるための相談応対も長く、経験豊富です。相談するところがわからなかった、と話す保護者は意外に多いですが、相談支援事業所の機能や役割について紹介していただきました。
笹山さんは医療機関で働く看護師さんでした。三つ子のお子さんを出産されましたが出生直後からの長いNICU入院生活の後は3人の育児に追われ、「普通の生活」ができない日々でした。この大変さを聞きつけた多くのボランティアさんに支えられたことで、「暮らしを支える原点はここにある!」と感じたそうです。
その後に育児を通して在宅における医療的ケアを保護者として経験され、様々な立場で多くの方と出会い、現在は医療的ケア児の地域生活支援を実践されています。
医療的ケアを必要とする子どもたちに対して、制度を活用しながら、地域生活(暮らし)を支えていきたいと語りました。
3人目の講師は、「三好 拓也」さんです。
三好さんは帯広市にある重度心身障害児者通所施設「ぐらんつ」で機能訓練を担当されています。素敵な居場所や素敵なスタッフがお子さんをサポートしていることを共有していただきました。
三好さんは、所属する「ぐらんつ」について、重症心身障害児者特化型施設であること、利用者自らが光り輝く存在である、それらを実践すべく医療的ケア児(者)やご家族等へ地域づくりを支援しています。
ぐらんつでは職員が主体的に活動を展開しており、年間を通した日々の活動について様々な写真を交えて紹介されました。こうした活動は私たちの日常生活や一般的な社会生活の一部そのものであり、利用者ひとりひとりがそれらの活動を通して体験したことで、表情に変化がみられることが印象的でした。
トリをつとめる 4人目の講師は、「中村 英之」さんです。
中村さんは士幌小学校で医療的ケア児の担任として4年目になる先生です。日常的に医療的ケア児達は増えていますが、学校も同様で、市町村立の学校の受け入れも増加の一途をたどっています。養護学校という専門的な学校もありますが、今回は町立小学校での様子や、生まれた地域で育つために必要な学校の役割などを共有していただきました。
中村さんは、町立小学校が医療的ケア児を初めて入学生として迎えたケースを紹介しました。入学前の準備から入学後の日々の学校生活において生じる多くの課題へ真摯に向かい合い、多くの関係者の協力があって今の児童たちの生活があります。
紹介された児童は医療的ケアが必要でも、学校が大好きで毎日の登校時に大はしゃぎするという話を聴き、関係する皆さんの活動ひとつひとつが小学校にいる多くの児童を笑顔にしていると感じました。
今回は4名の講演後に、参加者によるスモールグループディスカッションを行う計画でしたが、時間の都合で講演のみとなりました。
最後に演者が集まって意見交換を行いましたが、各分野で活躍する演者も他演者の講演を聴いて新たな気づきがあったこと、そして今後もこうしたネットワークを生かして医療的ケアが必要な方々を支える、より良い環境づくりを進展させることで意見が一致し閉会しました。
ご参加いただいたみなさん、そして、日々の活動を紹介いただいた演者のみなさん、ありがとうございました!